A:潤う柔肌 クーレア
「クーレア」は、非常に獰猛な両生類よ。
冒険者が狩った獲物を、横取りすることで有名だったけど、いつしかそれに満足せず、自ら人を襲うようになったみたい。
ある熟練の槍術士が退治に挑んだのだけど、ブヨブヨとした皮膚に槍を弾かれ、仕留め損なったそうよ。生半可な攻撃では、通用しないって訳ね。
~グランドカンパニーの手配書より
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ショートショートエオルゼア冒険譚
レヴナンツトールの南西に湿地帯があるのだがここは水属性エーテルの影響が強いらしく、巨大両生類の一大生息地となっている。
そこに何でも飲み込む化け物サンショウウオがいる。
クーレアと呼ばれるその化け物サンショウウオの話はエオルゼアでは知る人ぞ知る結構有名な話だ。この化け物サンショウウオは食欲は旺盛なのだが狩りが苦手で、冒険者や猟師が仕留めた獲物を横取りばかりする横着者なのだがサンショウウオ特有のぬぼっとした憎めない見てくれの為、大して恨まれることもなく、むしろそういうキャラクターが定着していて「まったくクーレアは仕方がねぇな」くらいにしか思われていなかった。それがどういう心境の変化なのか、人を襲うようになったらしい。人に危害が及ぶとなると碌に調査もしないでお役所仕事よろしく途端にリスキーモブに認定するのがグランドカンパニーのエオルゼア生活安全部モブハント課の通例だ。きっと今回も例によってろくな調査無しに倒せばいいんでしょ、倒せば的発想で認定したに違いない。あたし達はレヴナンツトールに着いたらすぐに聞き込みをしようと決めていた。
レヴナンツトールは昔は町ではなくたんなる軍事や調査に従事する者が滞在するキャンプに過ぎなかった。だがその風光明媚さが有名になるに従い徐々に軍事関係者や研究者以外の訪問者が増え、気が付くと一大観光地になっていた。当時は銀泪湖ももっと貯水量が多く、広かったらしい。そんな中、ガレマール帝国軍の侵攻や第七霊災の影響で陸地はすっかり荒れ地になり、湖は水量も減ってしまい、キャンプ・レヴナンツトールも壊滅。だがアルデナード小大陸のど真ん中という位置関係上、交通の要所ともなっていたため、もとのキャンプ地のすぐ北にある廃墟となっていた古城を改築し新たにエーテライトを設置し今のレヴナンツトールの姿となったそうだ。
あたし達はレヴナンツトールに着くとすぐに酒場に向かった。あたし達は二人そろってお酒は飲めないが、万国共通で人から話を聞くなら酒場で酔っ払って気持ちの大きくなった人に当たれというのはセオリーなのだ。
石造りの酒場はこじんまりとしていたが、客は少なくない。テーブル席が3席ほどしかない事もありほとんどの客が壁に作りつけられたカウンターや木製の窓枠に肘をついてもたれかかり立ち飲みをしていた。聞き込みを初めて数十分、自分がクーレアの討伐を依頼したという男にぶつかった。
男はこのレヴナンツトールで猟師をしているという。
「やっとの思いでよ、でっかい得物を仕留めたってのによ、クーレアの野郎が俺の獲物をさ、こう、ひと呑みよ」
男は酔いも手伝って大きな身振り手振りでその悔しさを表現した。
「それは悔しいよねぇ。で、どの辺で遭遇したの?」
男の残念話に大して興味はなかったが、色々聞きだすためには相手を持ち上げて気持ちよくさせなければならない。あたしはさも同情するかのように共感するそぶりをしながら質問した。
「おれぇはさ、頭に来ちまってよぅ」
この野郎はあたしの女優クラスに素晴らしい共感の演技もろとも華麗にあたしの質問を無視しながら続けて言いたいことを言い始めた。
「確かにな、獲物がでっかかったからよ、1,2日そのまま置いといたのは俺が悪ぃけどよ、もうさ、あんまり頭にきたもんだから持ってた短剣をあの野郎のド頭に突き刺してやったのよ」
「…はっ?」
「えっ?」
あたしと相方は思わず声を上げた。ちょっと待て。先に手を出してるのはこの酔っぱらいではないか。どんなに横着者な性質だといっても野生動物だ。攻撃されて身の危険を感じれば反撃するに決まってる。
「ねぇ、あんたから先に手を出したってのはホントの話?」
あたしは少々頭にきて乱暴に聞いた。空気が変わったのを感じたのか、酔っぱらいは今度はちゃんと返事をした。
「そりゃぁ、あれよ…その、間違いありません」
あたしと相方は顔を見合わせて同時に深いため息をついた。
さて、宿にもどって帰宅する準備をしなくては。